栃木県独特の言い回しや語尾が多く、聞くだけで“あの場所感”が漂ってきます。
お笑いコンビ「U字工事」が使う「〜べ」「〜っぺ」などの語尾変化は有名ですし、
寿司を「すす」、大根を「でーこん」と呼ぶなど、単語そのものにも地方色がにじみます。
また、敬語を複雑にしなくても、語尾に「〜やんす」「〜がんす」「〜ござんす」をつけるだけで丁寧語になる、というのもこの方言ならでは。
一部では「〜だべ」のような響きから汚いと誤解されることもありますが、使い方とニュアンスを知れば、むしろ味わい深いと感じるはずです。
あ行:代表的な言葉とその使い方
あしたあさって(明後日)
「あしたあさって」は「明後日」を意味します。
「一昨日」は「きのうおととい」と呼ぶこともあります。
例文:
“あしたあさっての登校日までに宿題を終わらせてくろな。”
(明後日の登校日までに宿題を終わらせてくださいね)
いじやける(イライラする・もどかしい気分)
「イライラする」に近い意味ですが、ただの怒りではなく「物事がうまくいかなくて苛立つ」ようなうずく感情を表します。
例文:
“針に糸がぜんぜん通んねぇ!いじやけるよ〜。”
(針に糸が通らなくて、もうイライラするよ〜)
うっつぁしー(うるさい・やかましい)
「うるさい」「騒がしい」「やかましい」といった意味で使われます。
「うっとうしい」に近い響きで、直感的に意味を感じ取りやすい方言です。
例文:
“毎日聴こえる蝉の声、風流なんだべけどさすがにうっつぁしーなあ。”
(毎日聴こえる蝉の声は風情があるけれど、やっぱりうるさいなあ)
うら(後ろ)
「裏」ではなく「後ろ」を意味します。
長野県でも同様の使い方があるようです。
例文:
“車のうらでガキらが遊んでいっから、事故になんねぇように注意しねぇべとね。”
(車の後ろで子供たちが遊んでいるから、事故にならないように気を付けないとね)
おっぺしょる(折る・曲げる・割る)
「折る」「曲げる」「割る」という意味を含む言葉で、「おっかく」「うっかく」とも言います。
例文:
“その枝をおっぺしょると、鳥の巣が落ちてくっからおっぺしょらんねぇでおこう。”
(その枝を折ると、鳥の巣が落ちるから、折らないようにしようね)
か行:強い感情や状態を表す表現
ごしゃっぺ(嘘をつく人・嘘話)
「うそ」「嘘つき」を意味します。あまり好ましい意味合いではありません。
例文:
“あの人ごしゃっぺばかりつくので、誰にも信用してもらえなくなんねぇべか?”
(あの人は嘘ばかりつくから、誰にも信用されなくなるんじゃないか?)
こでらんねえ(すごい・とにかく~)
良い意味でも悪い意味でも「ものすごい」という感覚を表します。
「とにかくすごい」「とにかく辛い」など、正反対の意味合いでも使用されます。
例文:
“U字工事さんの漫才が面白すぎて、こでらんねえので、みんなに見てほしいだべ。”
(U字工事さんの漫才が面白すぎて、とにかくすごいから、みんなに見てほしいよ)
こわい(疲れた・固い)
「疲れた」を意味する場合と、「固い」を意味する場合があります。
誤解しやすいので文脈が大切です。
例文:
“夏休みの宿題を一気に全部終わらせたっけ、今日はもうこわかった。”
(夏休みの宿題を一気にやったから、今日はもう疲れちゃったよ)
こないだ(先日)
「このあいだ」の短縮形で、「先日」を指します。
話し言葉としてよく使われます。
例文:
“こないだ行ったあしかがフラワーパークの藤棚が、言葉になんねぇくらい綺麗だったんさ。”
(先日行ったあしかがフラワーパークの藤棚が、言葉にできないくらい綺麗だったよ)
さ行:ちょっとニュアンスが深い言葉たち
しこってる(かっこつけている)
「かっこつけている」「気取っている」という意味合いで使われます。
やや揶揄的な響きがあります。
例文:
“お前、なんかしこってるな?”
(お前、ちょっと格好つけているだろ?)
したっけ(それじゃあ・そしたら)
「それじゃあ」「その次に」といった意味で会話のつなぎ語として使われます。
例文:
したっけ、そろそろ行くべか。
(それじゃあ、そろそろ行こうか)
しゃあんめ(仕方ない・しょうがない)
「あきらめるしかない」「どうにもならない」というニュアンスを含みます。
例文:
“しゃあんめ、今日はこれで我慢しとくか。”
(仕方ない、今日はこれで我慢しようか)
そばえる(甘える)
人に頼ったり、甘えたりする時に使う表現です。
例文:
“あの子、親にそばえてばっかりで、自分でやらねぇんだよな。”
(あの子は親に甘えるばかりで、自分でやろうとしないんだよね)
まとめと方言の“深み”
-
語尾や単語が豊か:〇〇しょる、〇〇べ、〇〇がんす…など、独特の響きを持つ。
-
敬語の簡略版:「〜やんす」でほんのわずかの奥行きが加わる。
-
感情表現が豊か:「こでらんねえ」「いじやける」など、その場の雰囲気がしっくりくる。
-
口語力に強い:話し言葉として自然で、地域の生活感がにじむ。
栃木弁を楽しむために
-
実際に使ってみよう:地元の人と話したり、U字工事の漫才を聴いてみたりすると、ニュアンスを掴みやすくなります。
-
“イントネーション”に注目:語尾の伸ばし方や抑揚が方言の魅力を左右します。
-
誤解を恐れずに:最初は「汚い」と感じるかもしれませんが、使慣れると“優しさ”や“親しさ”を感じられるはずです。
ここまで紹介した言葉は、栃木県内でも地域ごとに微妙に違いがあるかもしれませんが、“県民感”を味わうには十分なリストです。
“北関東の気取らない魅力”を感じ取れるフレーズばかり。ぜひ、気になった言葉を実際に口に出して使ってみてください!